『ここにいてほしい』

風の中に
公園通りに
見上げた空に
古着屋の跡地に
サイダーの泡に
ポークパイハットに
君を感じる

Jack Daniel'sに
満員の地下鉄に
マルゲリータに
撃たれた兵士に
ホッパーの絵に
青白い月に
君を見てる

ここにいてほしい
叶わぬ願い
わかってるのに
そう時々聞き分けの悪い子供のようさ

ぬかるみに足を取られ
降る雨の冷たさに身を震わせながら往く
あらゆる困難に抗いながら聖地を目指す巡礼者のように
そうさ真実でない石なら投げられても傷つくことはない
この胸の想いが消えることはない

ここにいてほしい
叶わぬ願い
わかってるのに
そう時々聞き分けの悪い子供のようさ

さえずる鳥に
甘い紅茶に
水のないプールに
環八の街路樹に
真夜中の夢に
忘れられた歌に
君を感じる

どこにいても
君を感じる



『この世界にとどまるために』

この世界にとどまるためにオレは
生まれてから今日まで
そう今この瞬間まで
ありとあらゆる権威に膝を折るフリをしてきた

この世界にとどまるためにオレは
“憎しみ”で出来たナイフで
今思えば自分によく似た連中
あの魑魅魍魎どもを切りつけてまわった

この世界にとどまるためにオレは
甘やかな
いやむしろ腐臭さえ漂う“裏切りのワルツ”に合わせて踊った

この世界にとどまるためにオレは
公園の街灯の侘しい光
その向こうに微かに見える痩せた月に向かって声を限りに吠えた

この世界にとどまるためにオレは
夜の軍団を引き連れ
ブレーキの壊れた真っ赤なスクーターに乗って夜明けまで
何も願いを叶えてくれない神様に中指を立てながら
善と悪を入れ替え
盗めるものを片っ端から盗んでまわり
市営住宅の裏の空き地で戦利品を分け合い
秘密の音楽を大音量で流し今となっては再現不能な奇声をあげながら踊り狂った

だがしかし
それらはいつだってあっさりと
ギラつくあの太陽の光に焼き払われ
ゴキブリの死骸のような小さな黒い点に成り果ててしまったんだ

この悲しみと戸惑いの入り混じった名状し難い感情は
執念深いストーカーさながら
24時間365日何年もの間
どこへでもついてまわった
まるでオレをこの世界にとどまらせたくないかのように

時は誰も待たない
友達が消えた
誓いに似た約束を交わした仲間達だった
いつだって無理な体勢からシュートを打ち
ことごとく枠を外し続けてきたアイツが消えた
誰に止められても
自分で決めたルール以外には決して従わなかったアイツも消えた
奇跡も賞賛も逆転もなくあっけなく消えた
そして消えるのは彼等でなくオレであってもおかしくはなかった

同じ頃
ささやかな希望だった漆黒の闇を照らす数少ない星達も

次々と自ら輝くことをやめてしまった
世界は少しづつ暗くなった

徒労と倦怠の匂いが入り交じった風が
少年と少女のうなじを撫でる

壊れてゆく音
崩れてゆく音
沈黙の音
諦念の音
頭の中でループするそれら悲しみのシンフォニーがオレと
オレに似た誰かを打ちのめす

長い夢から覚めたかのよう
蒼い季節が終わったかのよう
死か栄光か
あるのは僅かなアディショナルタイムのみ

それでもまだ
どこからか微かに聞こえてくる
『生きろ』という声よ

『生きろ』
その理由はわからなくても
『生きろ』
その目的はわからなくても
『生きろ』
その先に何があるのかわからなくても

『生きろ』『生きろ』『生きろ』
呪文のようなその声よ

その声はもしかしたら
人間という種なら本来は誰もが持っていたはずの良心の響き

その声はもしかしたら

人間という圧倒的に愚かな生き物だからこそ生み出した得た美しき幻聴

いずれにせよオレは催眠術をかけられたようにその声に従うだろう
なぜならその声は
この世に現れる事象のほとんどを理解できなかった自分にとって
数少ない正しい事のように感じられるからだ

この世界にとどまるためなら
這いつくばっても
罵声を浴びても
嘲笑されても
かまいはしない
たとえ君に理解されなくても

悲しみなんてどうってことはない

季節が巡るのが見える
逝ってしまったあの人の声が聞こえる
あの人の晴れやかな笑顔が浮かぶ

もしも
君が消えてしまっても
オレはこの世界にとどまるだろう

その時は
オレの胸の中にいる君と共に生きるだろう

この世界にとどまるために
オレは何もかもすべて全部みんな
抱きしめたいんだ

あの時果たせなかった抱擁を今こそ
この世界にとどまるために



『The sun is shining』

The sun is shining
太陽がためらないながら顔を出す
月は役目を終えて舞台をはけようとしている
大型トラックの隊列が首都高をパレードしている
シェトランドシープドッグと散歩する老婦人に会釈
空っぽのコインパーキングに転がってるビールの空き缶と
スナック菓子の食べカス
カラスが仲間達を呼ぶために鳴いている
君はまだ夢の中だろう
炭酸水の泡とささやかな希望が弾けた夏の終わり
今日は残りの人生の最初の一日



『生まれ落ち生きて朽ちる』

夜の果てへの旅 終着駅
降り立ったそこは断崖絶壁
祈りを捧げ飛び降りた
太陽に灼かれ目覚めた

すべての若き詩人達
かつての若き愚か者
下手くそな壁の落書きに似た真実の欠片抱いて

生まれ落ち
あぁ生きて朽ちる
それだけの短い旅のはずなのに
降り積もる憂いよ

友はその頬を濡らしてる
恋人が去ったと嘆いてる
365日のBluesに薔薇と慈悲とシンパシーを

最高に最低な気分でも
官能に弄ばれても
希望を打ち砕かれてしまっても
故郷を遠く離れても

生まれ落ち
あぁ生きて朽ちる
それだけの短い旅のはずなのに
降り積もる苛立ちよ

教会の鐘の音
遠くに聞こえる
鳥達羽ばたいた

初めてはいつだって一度だけ
さよならは何度目でも慣れはしない
彼女は砕け散ったハートの破片

泣きながら拾い集めてる

グラスゴーで見た夕焼けは
ゴッホの絵のように燃えていた
酔っ払ってご機嫌なあの人は
ジェームス・ブラウンを真似て踊ってた

生まれ落ち
あぁ生きて朽ちる
それだけの短い旅のはずなのに
降り積もる憂いよ
降り積もる苛立ちよ
降り積もる悲しみよ

生まれ落ち生きて朽ちる
生まれ落ち生きて朽ちる








 

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