
ザ・サブタレニアンズとは、地下生活者という意味だが、ビート・ジェネレーション文学に詳しい人なら、それがビートを代表する詩人ジャック・ケルアックの小説『地下街の人びと』の原題であると知っているだろう。そんな粋な名前をバンド名に付ける不遜な奴らとは何者なのだと思ったら、80年代から俺もよく知っているミュージシャンたちだった。
まず篠原太郎はザ・ブリックス・トーンのギター&ヴォーカルで有名だが、それ以前にブル―ハーツに入る前の真島昌利とブレイカーズというかっこいいビート・バンドをやっていたが、何故かブレイカーズはデヴュー・アルバム発売前に解散してしまった。黒水伸一はザ・シェイクスといういかしたロックン・ロール・バンドのヴォーカル&ギターでメジャー・デヴューし、あの佐野元春も彼らを評価していた。俺も当時の「宝島」誌で彼らの推薦文を書いたことがある。CROSSは知る人ぞ知るレザースというバンドのヴォーカル&ギターで、彼とは縁が深く、俺がやっていたブラックリストというバンドのレコーディングにも参加してもらったし、そのレザースのドラムでこのサブタレニアンズでも叩いている久保田敏明は、俺の前のバンドLOADEDのドラムも手伝ってくれていた。
そんな俺が高く評価してきた3つのバンドのフロントマン3人が集結して結成したバンド、サブタレニアンズはある意味でスーパー・バンドと呼べるかもしれない。篠原、黒水、CROSSのそれぞれが強力なオリジナル曲を作詞・作曲でき、それを見事に歌い演奏できるというバンドである。ミュージシャンとしても筋金入りのロックン・ロール・ビートを奏で、ソングライターとしてもビートニクの精神に繋がる詩的なイマジネーションに溢れる歌詞とキャッチーなメロディーを操る恐るべきアンファン・テリブルたちだ。
ただ心配なのはこの三頭政治がいつまで民主的に持ちこたえられるかだろう。なにしろ一艘の船の上で3人の鬼才ロッカーたちがそれぞれ互いに火花を飛ばしあっているのである。だから彼らのライヴにはできるだけ足繁く通った方がいい。ボヤボヤしていると束の間の「伝説」に終わってしまうかもしれない。その意味でこのサブタレニアンズは現在のライヴ・ハウス・シーンにおける、最もスリリングなバンドであると断言しておこう。DIG OR DIE!!
鳥井賀句(音楽評論家/HALLUCIONZ)