『New Eraのための覚書』

爆発する心は不協和音寸前のサックスの咆哮

あれは確か2021年の夏
長く暑く苦しかった季節の記憶
(君はどこにいて何をしていた?)


誰もが持っていたはずの善き心
それがあろうことか
運命のいたずらによってその地位を得たとしか思えない“か弱き暴君”によって 粉々にされてしまった

歴史の検証を待たずとも
あれは恐ろしく愚かで強欲で恥知らずな行為だった

“ここに生きる者は誰もが家族の一員なのだ”という
崇高な約束がメルトダウンしてしまった

美辞麗句のドレスを纏って踊るダンサーも
黄金を盗もうと企てるやせっぽちのテロリストも
今日のパンを得るために這いつくばり汗みどろになる市井の人も
かつては
誰もが等しく
誰かと誰かの愛の結晶だったはず

それなのに
あのとき以来我々は
残り僅かな餌に群がる醜い獣に成り果てたのだ
皆が等しく罪人となったのだ


耐え難い痛みの集中砲火
あの人の亡骸(なきがら)
365日のBlues
二酸化炭素が充満した膨満感
四割引きの冷凍食品だらけの夕食
邪悪な風に吹かれ眠る幼子

始まりは終わり
終わりは始まり
無限に続くループに絡めとられたままのオレたち


あぁお前の花びらは誰のもの
あぁお前の微笑みは誰のため
お前のサマードレスを脱がすのは誰?

お前のつく嘘は犯罪的で
お前の真夜中の正直さは奇跡のよう
お前の放つ矢に射抜かれたい
もっと揺らしてくれ
まだやめないでくれ
そう、あともう少し


太陽が顔を覗かせる
夜明けの街を歩く
粗大ゴミにでもなったような気分で
しかめっ面がよく似合う街を
コンビニの前の植え込みをベッドに眠りこけている男がいる街を
仔猫のスーがいなくなった街を


かつてのすべての若き野郎どもよ
もう一度、ギターを取って弦を張れ
今がその時だ

射程距離を完全に把握しているスナイパーのように優雅に
新しい歌を歌え
祈りの歌を歌え
喪失の歌を歌え
再生の歌を歌え

古くからの仲間よ
新しい友達よ
この嵐をやり過ごし
互いに生き延びて
いつかまた
喜びと悲しみがCROSSするあの十字路で会おう
その日まで
さよならは言わないでおこう

爆発する心は不協和音寸前のサックスの咆哮

これはNew Eraのための覚書

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